北嶋 泰周
研究テーマ
ネパールにおける露天商の空間利用とアナキズム的な想像力の拡張に関する人類学的研究
研究内容
私はネパールの首都カトマンズにおける露天商の空間利用から、それぞれが他者に迷惑をかけることなく自分勝手を最大限に実現する術について検討しています。彼らは公共道路法および地方自治体運営法に基づいた摘発対象であり、文字通りの“不法者”として扱われています。しかし、これまでの調査で目の当たりにしてきたのは、彼らが“不法者”というラベルを内面化しつつ、他者との関わりから、どうにかして独自の秩序を構築しながら露天営業を続けていく様子でした。彼らは不法行為を通じて、我々には気づき得なかった潜在的で豊かな空間価値を見出し、そこに自らの生きる世界を創造していきます。
このように、国家によって“不法者”の一種とされるスクウォッター(不法占拠者)としての露天商から路上空間のあり方を捉え直すことは、我々が自明視してきた〈合法と不法〉の境界を一時的に瓦解し、合法的なる領域から不法的なる領域への到達がもたらす、国家を前提としないアナキズムに基づいた「私たちはより主体的で自由な社会を自らの手で創ることができるのではないか?」という想像力の拡張につながると考えています。
写真①:歩道橋の上で営業する露天商。彼らは朝8時から12時まで若者向けの商品を販売します。それらも彼らが「ここで何をいつ売ると良いか?」を考えた結果でした。

写真②:渋滞が発生すると市警察が出動してしまうので、露天商が自ら交通整理を行って摘発を逃れようとします。これは通行人の移動を促すことで自身の商品を効率的に売る目的もあります。
