ともに来たれ、スーフィズム研究の道へ

【5.タリーカを進む旅人】


 さて、イスラームでは信仰の深まりを「シャリーア→タリーカ→ハキーカ」という図式で示すことがあります。母音だけとると、みんなアイーアの形をしていて、ある種の語呂合わせになっていることが分かります。

 シャリーアとは、「イスラーム法」のこと。基本的にアッラーの命じ、禁じたことを集大成したものです。これは人間の外面的行動に関する規範で、共同体維持のためにも不可欠なものです。しかし、外面的にシャリーアにさえ反していなければ、それでよいのか。ムスリムとしてよりよく生きるためには、内面に目を向け、心を研ぎ澄まし、神に思念を集中する必要がある。こうして人は、修行の道を歩み始めます。この「修行道」をタリーカと呼びます。最後のハキーカというのは、この道を究めた先にある「真理」のことです。

 三つの同心円で、これらの要素を表すことができます。シャリーアは一番外の部分。表層にありますが、同時に最もカバーする幅が広い。これに対してハキーカは、最内奥の部分。一部のエリートだけがここに到達できる深層。タリーカは、この二つをつなぐ中間項。シャリーアを踏み行ったうえで、真理を求めて内面の旅に出るすべてのムスリムが通る道なのです。いわば「ムスリムとはタリーカを進む旅人」だと言うことができるでしょう。

 ところがこのタリーカには、もう一つの大きな意味があるのです。

 
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