ともに来たれ、スーフィズム研究の道へ

【1.イスラームの二つのベクトル】


 イスラームは、二つのベクトルがせめぎ合いつつ共働する場と考えることができます。一つは、心の中へ、内へ向かっていこうとするベクトル。もう一つは、社会へ、外へ向かっていこうとするベクトルです。

 宗教が個人の信仰の問題を扱うのだとすれば、イスラームが一つ目のベクトルを持つことは容易に理解されるでしょう。しかし、共同体思想を根幹に持つイスラームにおいては、二つ目のベクトルもこれと同じくらい重要な意味を持ちます。ムスリムはアッラーへの信仰を持っているかどうかによって、最後の審判の日に一人一人裁かれますが、同時にウンマと呼ばれるイスラーム共同体に属することによって、救いの資格を得ているともいえるからです。

 この二つのベクトルが、方向性を異にしながらも、いやむしろ方向性が逆だからこそ、呼応しつつ相補い合っていることを、次に見てみましょう。

 
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